カテゴリー:中小企業憲章
2009年8月号【第16回】 「まっとうな経営環境づくり」への願い 佐野譲二氏((株)和泉運送・富士支部)
世界同時不況襲来で私たちの運送業は出荷量の減少という経営困難を背負い込んでいます。昨年までは燃料価格の高騰が経営を圧迫していました。別業種の人が同時不況を「天国から地獄」と表現するとき、運送業は「地獄の後に地獄だよ」と答えます。業界の危機という言葉が交わされています。
企業の再生産のための適正な運賃がなかなか確保できない状況が続いています。この15年間で運送業者数は1.5倍になりました。過当競争が運賃競争につながっています。その背景にあったのが参入の「規制緩和」という国の政策です。競争原理の導入はもっとものようですが、社会的な規制が十分に機能しない社会では「いびつな土俵」での競争が拡大します。一例をあげれば社会保険未加入の業者はより安い運賃で仕事を確保していきます。
私が仕事に携わった当初のトラック運送業は高度成長時代の急成長後で過重労働過積載などが一般的な未成熟な段階にありました。大阪から深夜にかえった運転手を怒鳴りつけてそのまま東京に走らせるような日常を何とかしなければと思った過去を振り返ります。その後成熟したかに見えた業界に立ちはだかった「規制緩和」との格闘。こうした経験の先に「まっとうな経営環境づくり」への願いをこめて、私は憲章づくりの運動につなげています。
圧倒的に中小零細業者の多い運送業界にあって、余裕をもって運行の安全を考え、乗務員に輸送への誇りを持ってもらうためにも公正・公平な競争条件の確保を体現する経済社会の到来を実現したいものです。