【表紙写真】藤枝パークインホテル 代表取締役 寺島雅之氏
【逸品】ベジ・テーブルダイニングcomodo
会員企業名 | (株)藤枝パークインホテル | 設立 | 1982年(昭和57年)1月 |
会員名 | 寺島 雅之 | 業種 | ホテル業 |
所属支部 | 志太支部 | 社員数 | 正規15名、パート15名 |
会暦 | 2007年4月入会 | 事業内容 | ホテル業、レストラン業 |
藤枝パークインホテルは、前身であった「旅館 美の字」と並行し、1982年(昭和57年)1月に設立されました。その後の増築に伴い、藤枝パークインホテルに一本化し、「美の字」の屋号はホテル1階のレストランに「和食割烹 美乃路」という形で残ります。その後2度の増築、内装リニューアルを経て現在に至りますが、その過程の中で「和食割烹 美乃路」は平成17年、「caffebar comodo」へとリニューアルしました。
リサーチを元に和食レストランをリニューアル
レストランのリニューアルに際し、寺島氏は「ホテルと和食とではイメージがマッチしない」と考え、ホテルに求められるものは何かをリサーチしました。そして「食事処にしたら『食事をする為の場所』、即ち食事をしないと利用しない場所になってしまう。食泊客の利用率から鑑みると、別の利用方法が合うのではないか。ホテルの宿泊客が外で食事を済ませた後、お休みの前にちょっと飲んだり談笑したりする場所、またお客様同士がコミュニケーションをとる場所として、『バー』が当てはまるのでは」と考えました。
こうして「コミュニケーションの場を創る」という想いから始めた「caffebar comodo」でしたが、食事も提供して欲しいというお客様からの数多い要望を受け、「Dining cafe comodo」へとリニューアル。その後の平成21年には、シェフが変わったことを機に、特長のある店を目指し、野菜中心の料理である事を明確に打ち出し「洋風主菜 comodo」へ、そして平成25年、ブランドイメージ向上を目的に現在の「ベジ・テーブルダイニングcomodo」へと名称を変更しました。
野菜へのこだわりから広がる未来・可能性
comodoのメインターゲットは、30~40代の女性です。野菜を軸に据え置くと同時に、この年代の女性に関心の高い「健康志向」「オーガニック志向」と結びつけました。これが奏功し、現在ではランチタイムは満席で、予約が必須という程、地域のお客様の支持を得ているそうです。また、お店のコンセプトも徐々に浸透し、宴会でも「野菜料理で」という要望が増えてきている、との事です。
また、comodoでは「ここに来なければ食べられない」という野菜料理の提供を念頭に置いています。ブームに乗るのではなく、本当に美味しいものを召し上がって頂きたい、との思いから、出来る限り生産者の元に必ず足を運び、畑、作り手のこだわりや想い、野菜の味を見て、その上で料理を提供しています。単に野菜を売るのではなく、その商品の背景、ストーリーを伝え、野菜料理に想いと驚きを添えて提供している事が、comodoの成功の秘訣なのでしょう。全国各地の野菜に対して常にアンテナを高く張り、美味しい野菜を探し求める寺島氏は「やればやる程、野菜の世界や出来る事が拡がっていく」と語ります。
現在comodoは、野菜料理屋として認知されており、ブランド力が付いてきています。寺島氏は次の一手として、野菜を軸としたcomodo監修の商品をプロデュースし、広く展開していこうと計画しています。
藤枝パークインホテルとcomodo
ホテル営業の上で食事の提供は必須と定められているのですが、近年ではここに掛かるコストをとことん抑える事で宿泊価格を抑えた大手チェーンホテルが、業績を伸ばし勢力を拡大しています。このような脅威に対し、地域のホテルが同様の戦略で真正面から立ち向かっても、勝ち目はありません。そこで藤枝パークインホテルでは、飲食の場を「お客様と触れ合う時間や、より深いサービスを提供する場」と位置付け、その質を深める事を選びました。飲食の位置付けが明確になると、出来る事がいろいろと増え、営業戦略の幅が広がった、との事です。
藤枝パークインホテルのこれから
寺島氏は自社ホテルを「目的となるホテル」ではなく「地域が目的であり、その為の宿泊の場」と捉えています。そして、地域が活性化する中で「選ばれるホテル」であり続ける事を目指しています。
そのような考えの中、寺島氏は、ホテルは県外からの利用者向け、comodoは地元利用者向けとターゲットを明確にしています。また、地域への想いや宿泊客に藤枝を知ってもらいたいという想いから、自社でレストランを持ちながらも、宿泊客向けのグルメMAPを作成し、地元の飲食店を楽しんでもらう仕掛けも設けています。また、comodoは「地域の人が利用しやすい場」とする事で、地域との関わりを深めていける、としています。
寺島氏は最後に、「宿泊産業は地域活性のキーファクターであり、活性化の為には良いサービスを提供する宿泊業が地域に必要不可欠だという考えを根底に、これからも高い喜びを提供できるホテルにしていきたい」と語ってくれました。
戦略に基づいた思考、自分の考えを様々な人に話し意見をもらう事の必要性、宿泊業の担う社会的役割や可能性について熱く語る寺島氏。これからの活躍にも、目が離せません。
取材・文:塚本 和成氏(㈲塚本商店・志太支部)