私は2011年に第8期「経営指針を創る会」に参加しました。その3年前、2008年のリーマンショックの影響は甚大なものでした。売り上げは4割落ち込み、翌年もそこから更に2割減少、両年ともに年間売上比30%超の営業損失を計上しました。幸い2010年から回復基調に転じ、「さぁ出直しだ」と全社で意気込んでいる矢先、東日本大震災が起きました。我が社では大きな被害はありませんでしたが、関東方面の顧客からの注文はストップ、また計画停電の影響で生産ラインの混乱が続き、体調を崩す社員が続出しました。今思うとなぜそのような時期に創る会への参加を決意したのか、正直良く覚えていません。
リーマンショックと震災後の混乱は想像以上に大きな傷跡を残していました。金銭的損失はもとより、特に深刻だったのは経営者である私の精神面の影響でした。景気動向など外部環境に左右されやすい自社事業の将来性を悲観し、事業転換ばかりを考える日々。参加した創る会でもそのことを口にしていました。その時ある先輩にピシャリと「そんなことばかり考えて、今の仕事を一生懸命やってくれている社員に恥ずかしくないのか」と言われたのです。その時は「俺だって社員のことを一番に考えている、うちの会社の事など何も分からにくせにっ!」とムカムカしながら三島まで帰ったのですが、一日、二日と時間がたつに従いその言葉がだんだんと腑に落ちてきました。確かに自分の分析は甘かったかもしれない、可能性があるかもう一度徹底的に考え直そう、と…。結果的に「可能性」はありました。それは他社がやりたがらない、場合によってはリスクを伴う仕事ですが、我が社は新たな一歩を踏み出しました。勇気が要りましたが、その勇気をくれたのもあの先輩の一言でした。
経営指針は羅針盤に喩えられますが、その目的地をどこに定めるのかは船長が決めます。私は創る会のおかげで目的地を誤らずにすみました。導いてくれた諸先輩方と同期の皆さんには、心から感謝しています。
経営指針を創る会8期卒業生 三田 宏一氏(㈲エムケイテクノ・三島支部)
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