【私の逸品】大正元年創業の「ひらきのクリエーター」 (有)ヤマカ水産 小松 寛氏 沼津支部

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【写真】(有)小松水産 専務取締役 小松 寛氏

【逸品】正子さんのさば醤油干し

会員企業名 (有)ヤマカ水産 創業/設立 1912年(大正元年)/1973年(昭和48年)
会員名 小松 寛 業種 食品製造業 水産加工業 干物製造及び販売
所属支部 沼津支部 社員数 正規9名、パート36名
会暦 2012年6月入会 事業内容 各種干物製造、販売

 

(有)ヤマカ水産 外観

(有)ヤマカ水産の専務取締役 小松寛氏は、物心着いた時には周囲から次期社長と思われていました。また、自身も跡を継ぐものだと思っていました。その後、中学、高校、大学を経ていざ就職という時、「まずは別の会社に入り勉強して、家業に役立つ知識をつけよう」と思います。こうして4年間、東京・築地の中卸会社に勤め、人脈も形成した後、いよいよ家業を継いで会社を盛り立てよう、と(有)ヤマカ水産に戻ります。

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しかし、いざ会社に入ってみると、その経営状態は良いものではありませんでした。そこで自社を見渡してみると、商品力も製造能力もあるのですが、販売のルートができていません。そこで小松氏は、自身の経験を元に考えをまとめ、販売ルートの確保に着手します。前の会社で働いた時に築いた人脈を活かして販売ルートを確保し、売り上げは伸びていきました。

このままいけば経営状態を改善できる、と見込んだ矢先、原材料価格の不足・高騰の波が押し寄せます。これにより業績は悪化。この状況をなんとか打破できないか、という思いから、小松氏は同友会に入会しました。

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同友会入会後、第10期 経営指針を創る会に参加します。経営理念を作るに際し小松氏は、干物にこだわらず何か新しい試みを入れてみようと一度は思います。しかし、創る会を通じて「自分は干物が好きだ」という想いと「まだまだ干物の良さは拡げられる」という考えに辿り着き、会社の良い所・悪い所を洗い出した上で「干物で勝負をしよう」という決意を籠めた経営理念を創り上げたのでした。

創る会を卒業後、小松氏が着手したのは、職場環境の改善でした。2階にある食堂を綺麗に改装し、自分が作った経営理念を各テーブルに配置。また、週に一回昼礼も行うことにしました。こうすることで、一致団結する機会が増えると共に、経営理念も次第に浸透するようになりました。

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さて、(有)ヤマカ水産が生んだオリジナルブランドに、沼津の漁師の家庭の味を基本としたレシピを元に製作された「正子さんのさば醤油干し」があります。これは、昔から漁師の家庭で愛されてきた味を、無添加の醤油、砂糖、純米酒のみで再現したものです。今回の「私の逸品」でもある、2年前から販売を始めたこの醤油干しは、味がとても良いと好評を得、沼津ブランドに認定されました。

「正子さんのさば醤油干し」

この「正子さんのさば醤油干し」をはじめ、訴求力と消費者の期待に応える地力が、(有)ヤマカ水産の干物にはあります。この力をさらに伝え広めるため、毎週土曜日の午前中に、ピアゴ香貫店の裏にある自宅の前で干物販売をしています。直接販売し、多くのお客様に干物の魅力を伝え、体感してもらうことで、干物消費量の拡大につなげることが狙いです。

そして2014年の夏から、アジの開き体験教室を始めました。沼津のあじのひらきは有名ですが、その作り方を知っている人は多くありません。特に子ども達にとっては未体験のことだろうと考え、夏休みの自由研究としても取り上げられるよう、夏の開催としました。

アジの開き方を丁寧に教える小松氏

アジを捌き、開いた後、工場の設備で「あじの開き」が完成します。その完成までの間、社内見学や自社の商品を食べてもらう、というプログラムになっています。
干物作りを体験することにより、思い出として記憶に強く残ります。そして、スーパーで干物を見たら「自分も作ったことがあるもの」と愛着が湧き、魚のことを好きになるのではないか、また魚の消費につながるのではないか、というストーリーを描いています。このような、干物作りを体験できる場所の提供は、沼津の地場産業、そして干物の文化を守ることにも繋がるのではないでしょうか。

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小松氏が考えていることとして最後に挙げるのは「沼津の魚を使った干物づくり」です。干物は長期保存の観点から冷凍するのですが、そうするとなかなかふっくらとした食感の焼き上がりになりません。そのため、冷凍しても美味しく食べられる原材料を使うようになってしまいます。
この状況を変え、(有)ヤマカ水産の「沼津の干物」を作るため、良い状態のまま保存できる方法がないか、干物の加工にチャレンジを重ねている最中、とのことです。

さば醤油干しと認定書を手にする小松氏

かつては一般家庭の代表的なおかずでもあった、干物。しかしその消費量は、時代の変遷や生活様式の変化、食の多様化などに伴い次第に減ってきました。そのような中、いま一度世の中の干物に対する価値観を変えたい、干物の持つ様々な魅力や価値、ポテンシャルを引き出すため模索しながら会社を継続させていきたい、と小松氏は語ってくれました。

取材・記事:田中 玄徳 氏(㈱さなえ・沼津支部)