報告者:報告者:岩島 伸二氏
(京都エレベータ㈱・京都同友会代表理事)
創立:1983年12月
資本金:1,000万円
事業内容:エレベーター、エスカレータ、ダムウェータの保守点検、修理、販売
検査、設計、施工。及びこれに付随する一切の事業。
立体駐車装置、建築設備等の保守点検、修理、販売、設計、施工。
京都エレベータ㈱は1983年12月に設立、年商約6億5千万円、社員数62名(協力業者含む)の、主にエレベーター・エスカレーター・立体駐車装置等の定期点検・修理・法定検査・改修工事を行う会社です。岩島氏は、会社が成長する中で社員教育の必要性を痛感していた折に同友会と巡り合い、会の目指す経営者としてのあるべき姿を学び、社員共育の真髄と出会いました。
同友会の社員共育・求人委員会では、経営者が変わらなければ社員も会社も変わらない事を教えられ、自ら変わる事を求められました。岩島氏は自分を変える事の難しさを実感しながらも、少しずつその実践に取り組みました。同友会の共育のバイブルとも言われる書籍『共に育つ』には、「その気にならない限り人は変わらないものだ」と教えています。また、「経営者がどんな動機で経営を始めたとしても、従業員との共同、協力こそが企業存続の条件である。だから同友会は労使が共に育ち合える土壌づくりをして共育に取り組まなければならない」と教えています。そのために同社も、2000年から経営指針書を社内で発表し、社員と共にその作成と実践に取り組んでいます。
最後に岩島氏は「経営指針書に基づく経営を実践している企業は黒字である」という中同協の調査を挙げ、「会員全てが経営指針書を作成し、真剣に企業経営に取り組めば黒字化する」と経営指針書の作成、社内浸透、実践の重要性を報告してくださいました。
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経営者の役目~岩島氏の決意とは?~
「会社は何を目指していかなあかんねん!!」岩島氏は、会社設立からこれまでの様々な苦労話を飾らず真っ直ぐに話してくださいました。独立系のエレベーター保守会社として技術者仲間4名と事業を開始された当初は朝礼もなく、みんなでコーヒーを飲みながらのんびり仕事を始めていたそうです。しかし社員が14名に増加した1992年、社員教育を痛感し同友会に入会します。共育委員会に参加しますが教育のノウハウは教えてもらえず、まず自らが変わることを求められ、2〜3年は話を聞いて帰るだけ。1996年に20名近い社員数になって、経営者自ら変わる決意をします。初めに技術者ばかりの役員の意識改革の研修。18時から21時まで月2回を6ヶ月間、外部講師を招いて実施。続いて一般社員研修。自己啓発セミナーにも出会い、社員全員を1年間かけて参加させます。「何の為に我々は仕事をしているのか?」「何の為に会社は存在しているのか?」「なぜ会社は利益を上げなければいけないのか?」「その為に自分はどんな風に努力をしていかなければいけないのか?」を考え、お客様を大切にする姿勢や自分達が会社を支えていくんだという姿勢が生まれてきたのだそうです。そして社員の方から経営指針書を発表してほしいという要求があがってきます。
岩島氏の決意とは何だったのか?私は、経営者自ら会社の売上げのために頑張る決意ではなく、社員ひとりひとりが喜びを持って働くことのできる意識作りが経営者の役目であるという決意だと思いました。最後に岩島氏は大きな声で語ってくれました。「黒字になるのは簡単や!経営指針書を作って実践すればいいんや!」できていない自分の心に痛みがあったのと同時に励まされた気がしました。
松下 恵美子氏(三協紙業㈱・静岡支部)
人を惹きつける、挑戦する経営者の姿
「我が社は、メーカー系列ではない、独立系のエレベーターメンテナンス会社です」。エレベーター業界の実状とメーカー縛りの厳しさを経験から知っていた私にとっては、この言葉の持つ重み~岩島氏が茨の道を歩んできた挑戦者であること~をすぐに理解することが出来ました。「会社を変えるためには、まず経営者自らが変わらなければならない」と同友会での学びを深め、組織の上部から意識改革を浸透させることで、経営指針に基づいたゆるぎない経営を実現させる。事業継承の準備を10年前から行い、全ての問題をクリアにした上で親族以外の後継者に全権をバトンタッチする。どちらの長期ビジョンも、実現に至るまでの様々な努力~行動力・忍耐力・継続力~は、相当なものであるはずなのに、それを京都人らしい柔らかな関西弁と温和な表情で他人事のように淡々と話す岩島氏の姿に、とても真似の出来ない器の大きさを感じました。
下京支部が、一昨年度90名もの新会員入会を達成したのは、岩島氏のような挑戦する経営者が身近にいたことが大きな理由のひとつである、と確信した記念講演でした。
稲原 研氏(松屋電気商会・富士宮支部)