【逸品】地域に根付いた伝統の技術
会員企業名 | ㈱松浦スチロール工業所 | 設立 | 1965年 |
会員名 | 松浦 令和 | 業種 | 製造業 |
所属支部 | 志太支部 | 従業員数 | 80名 |
会暦 | 2016年2月入会 | 事業内容 | EPS製品の製造及び販売 |
創業~
吉田町川尻に本社を置く株式会社松浦スチロール工業所、川尻工場長の松浦令和氏を訪問しました。
氏の祖父が昭和31年に創業、昭和40年に株式会社に改組し、現在6つ目の工場を新設しました。
時とともに事業が拡大し、現在稼働している工場は4つ、本日は新設工場の隣にある、川尻工場での取材です。
氏は現在44歳。同社で使う原料を扱う会社に勤め、26歳の時に同社へ戻って来ました。現場での梱包作業、成型作業、営業と、一通りの基本的な仕事を覚え、現在は川尻工場長として、全体のマネジメントをしています
工場見学
本日はスチロール製品を作る過程を紹介してもらいながら、取材しました。
1階原料庫。原料の発泡ビーズです。0.5ミリの粒が約50倍に膨らむとのことです。
蒸気で発泡させるために、上の階にパイプで吸い上げられていきます。
3階発泡機。小さなビーズが膨らんでいます。大型の機械を用いて、小さなビーズ原料をスチロール製品へと加工していきます。
熱気ある工場内ですが、現場の社員さんが気持ちのいい挨拶をしてくださいました。
4階型物成型機。膨らんだビーズ原料を金型へ流し込み、発泡スチロール製品へと、加工成型する工程です。
こちらでも主には機械を用いて、一定のサイクルで製品が生み出されていきます。
3階金型交換所。同社では、300面以上の金型を保有しているといいます。
顧客からの注文によって、金型の交換が必要で、そのための専属オペレーターが数人でチームになり、手際よく金型交換を行っています。
熱気があふれる工場内で、力のいる作業となります。
主には若い社員さんが中心となって、交換作業を行っています。
1階梱包・集荷。工場の4階まで上げられたビーズ原料が製品に加工され、機械と人の手の融合によって、1階までおろされてきます。
ここで検品もかねながら、人の手で梱包されます。二階部分に作業スペースがないのは、出来上がったスチロール製品を高く積み上げるため。
三階の天井いっぱいまで積みあがった製品をみると圧倒されます。
そしてなにより驚くことは、製品を積み上げ、運搬するのは、人の手で行われることです。
三階の天井まで届こうかという製品を、軽々と持ち上げ、狭い通路を出荷のトラックまで運んでいきます。
高く積みあがった状態で運んで来た製品を一旦降ろし、トラックに積みやすいようなまとまりにし、次々と積み込みをして行きます。(工場長曰く、この降ろす作業が一番難しいとか)写真9写真10
工場といえば、時代ともに自動化されているという印象があったため、人の手で行う作業をなかなか想像がつかない状態での取材でした。
製品の製造は機械に任せるとしても、金型交換の技術や、梱包作業技術、さらには集荷・運搬技術は、スチロール製品工場という中で確実に受け継がれ、機械では出来ない、人の手による熟練の技を感じました。
原材料をスチロール製品にするために、松浦スチロールならではの熟練の経験と技術がなければ製品に仕上がりません。
原材料を製品にする工程そのものが、逸品を生み出す技であると感じました。
今後の展望
氏は、工場長として、働きやすい環境づくりを念頭に仕事をしています。
なかなか社員が定着しにくい時代となっていますが、同社では離職する社員は少なく、氏の取り組みが活かされています。
人材の確保は大きな課題ではありますが、仕事にやりがいを持ち、生き生きと仕事ができる、働きやすい環境づくりを、さらに進めていきたいという言葉が印象的でした。
漁業がさかんな静岡県において、発泡スチロールの成型の仕事は、魚を運搬するにあたって欠かせないものです。
漁獲量が日によって変化する漁業者が主な顧客です。
急な注文にも対応できる体制づくりと、その安心感で、静岡の漁業の一端を担う、決して欠かすことのできない会社であると感じました。
また、他国ではスチロールは建築資材に用いられていたり、既存の使い方以外にも様々な用途で使うことができると氏は語ります。
スチロールの可能性を常に模索しながら、新たなチャレンジを考えている事がとても勉強になりました。
最後に、同友会では、会社の後継者として、同じような立場の人とも交流しながら、常に変化する外部環境や社内での悩みを共有し、解決のヒントを探して行けるようにして行きたいと語りました。
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取材・記事:山田 幹也氏(㈱立花ガーデン)
取材:松葉 秀介氏(松葉倉庫㈱)